あなたに飼われる猫になりたい

大きな声では言えない日常の本音を書きたいと思います。

練習拠点・コーチの変更

ロシアの女子フィギュアスケーターは年々競争が熾烈になっている。

ずっと昔からそうだったのかもしれないが、2014年のソチ五輪でのメダル獲得を目指して、国を挙げての選手強化が特に競争を激化させたように思う。

 

中でも次々と新星を作り出しているのがエテリ・トゥトベリーゼコーチが中心となっているサンボ70である。

2019-2020シーズンにシニアデビューをし、表彰台を総なめにした3人娘、コストルナヤ、トゥルソワ、シェルバコワのうち、コストルナヤとトゥルソワは指導に不満があったのか、ここでの練習に限界を感じたのか、下の世代に脅威を感じストレスが爆発したのか、理由はよくわからないが(親の意向も大きかったのだろう)、更なる高みを目指してプルシェンコのもとへ昨年移籍した。

 

しかし、今シーズン、コストルナヤもトゥルソワも期待したような結果が得られず、結局ふたりともエテリの元へ戻ることが発表された。

 

かつては、カザフスタンのツルシンバエワも平昌五輪銀メダリストのメドベージェワもエテリの元を去り、一時期カナダのクリケットクラブを練習拠点にしていたが、彼女たちも夢やぶれて(?)エテリチームに戻った。

 

練習拠点変更。

コーチ変更。

選手たち(とその親たち)は何かしらの不満や不安を抱えて、よりよい環境を求め別の場所へ行く。

たいていの場合は大きな試合で思ったような結果が出せず、行き詰まりを痛感し、拠点変更に突破口を見出したいのだろう。

 

日本の選手でも、例えば濱田美栄コーチのもとを去りアルトゥニアンコーチに指導を仰ぐようになった本田真凜や、山田・樋口コーチと決別し、ランビエールと師弟関係を結んだ宇野昌磨、他にも紀平梨花ランビエールとタッグを組み、宮原知子はカナダのバーケルコーチのもとへ、本郷理華も一時期バンクーバーへと、ほとんどのケースが成績が落ちて来て、ここからなんとかまた表彰台に這い上がろうと移籍を決断したように見える。

がしかし、(今のところ)彼らもロシア女子と同様、拠点変更がより良い結果に繋がっているとは言えないのが現状である。

 

成績に伸び悩んだ際には、「指導者を変えたい。変えたら全てがうまく行くんじゃないか。成績が伸びないのはコーチの指導方法に問題があるからに違いない」と思ってしまってもしかたがない。

 

しかし結局のところ、本人の持って生まれた才能と、正しい努力と、年齢的なピークと、絶対的に必要な運がぴったり噛み合わないと、どこへ行っても大成しない人はしないのだろうと思う。

(それはフィギュアスケートに限った話ではなく、他のスポーツでも、スポーツ以外のこと、たとえば音楽でも学問でも何でもそうである)

 

フィギュア界ではカナダのクリケットクラブは誰からも一目置かれる特別なリンクである。バンクーバー五輪キム・ヨナ、ソチ&平昌の羽生結弦と、五輪三連覇中であるのだから当然だが、そこへ移ってきたメドベージェワはもはや伸びしろなくロシアへ帰り、ジェイソンは未だ四回転を試合で成功できず、ジュニア時代からクリケットにいるジュンファンは今ひとつパッとしないまま背ばかりが伸び、たとえクリケットに籍を置いてもダメなものはダメという現実を突き付けられているようである。

 

フィギュア観戦歴の短い私にとって、唯一コーチを変更して成功したのは羽生結弦だけだ。

羽生結弦はシニア2シーズン目の2012年、ニースの世界選手権で銅メダルを獲得し、一躍ソチ五輪のメダル候補に名を連ねた。

龍が天を駆けて行くような勢いがあったのだろう。

そういう上り調子のタイミングでなければ、もしかしたら拠点変更はうまくいかないものなのかもしれない。

 

あるいは、羽生結弦ほどの才能と努力と強い運があれば、どこででも成功したのかもしれないが。