遺産相続の話というと、小説とか映画とかドラマではよく骨肉の争いが話題の中心になる。
「そんなのフィクションの中だけの話なんじゃないの?」って思っていたが、まさか!と半ば笑ってしまうくらいのことが自分の身の上に降りかかってきた。
まずよくわかったのは、争いの元凶は相続を受ける人間(配偶者や子供たち)ではなく、相続権のない人々であるということ。
たとえば父親が亡くなりそうになって何某かの遺産を子供たちが受けることになった場合、横からごちゃごちゃ言って来るのは相続権のない父親のきょうだいや、子供たちの配偶者なのだ。
父親のきょうだい、例えば、何も実家の援助を受けずに嫁に行った父の妹たちとか、実家を陰から支えていた父の弟たちが、父が死にそうになってから「俺たちは今まで大変だった。兄貴には随分尽くした。遺産を少しくらいは貰う権利がある」などと主張し始める。
あるいは子供たちの配偶者が「お義兄さん(父親の長男)がこの家と土地を相続するなら、他の土地を自分たちに多目にくれてもいいんじゃないか」とか「きょうだいで会社を設立して土地活用と資産運用をしたらうまく税金対策できるし、収入の分配もうまくいくよ。会社設立の手伝いをしようか?」などと言ってくる。
みんな「金。金。金」だ。
もちろんお金は大切、それはわかる。
私もお金なんか要らないなんて絶対に言わない。
けれど、相続権のない人間が私たちきょうだいをコントロールしようとあれこれ口出しをしてくるのは、本当に争いの元になるだけなのだ。
私たちきょうだいは仲良くやっている。
話し合いもちゃんとしている。
きょうだいみんな納得して相続を進めようとしているのに、関係ない人間がどうしてそこまで口を出してくるのか?
うまくいっている私たちきょうだいの仲までぎくしゃくしてしまうではないか。
そんなことをモヤモヤ考えていた頃、父親の弟が事故で急死した。
私たちきょうだいが陰で「あの人がいなければ平和なのに」と言っていた矢先の出来事だった。
怖かった。
吐き気がして体が震えた。
(ただ、ずっと健康で好きな仕事をして、子供にも孫にも恵まれて、それで介護の必要もなく、誰の手も煩わせることなくこの世を去ることができた叔父は、ある意味幸せな人だったとは思う)
こういう事が実際に自分の身の上に起きると、ああ、骨肉の争いは本当にあるなと思う。
事実は小説より奇なり、とはこのことかと。